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  連載コラム 2009.春 最新号

札幌電気工事業協同組合 理事長 尾池 一仁
 平成20年10月14日、我が家に待望の初孫が生まれました。真実に生きることを願って「真生子(まおこ)」と命名いたしました。
 今、我が家では、優性遺伝子と劣性遺伝子を巡って、小さな争いが起きています。「一重瞼はお父さんに似ている」「鼻は小さいけれど小鼻が張っているのはお婆ちゃんに似ている」「肉付きが良くて首が短いのはお爺ちゃんに似ている」「人見知りせずに愛想が良いのはお母さんに似ている」など、それぞれが良い所は自分に、悪い所は他の家族にと、勝手に品定めをしています。当の孫娘にしてみれば、優性・劣性の選択もままならずに生まれて来たのに早速、大人達の理不尽な主張の洗礼を受けているのであります。
 それでも、汚れを知らない小さな思考回路は、大人達の自分に向けた優劣の会話に満面の笑顔で答えているのであります。

 優性遺伝子・劣性遺伝子を例として孫娘の形質の優劣で表現させて頂きましたが、正規な学術理論は中学校で習った「メンデルの法則」の父母の形質が子供に遺伝することを「優性遺伝」、それ以前の子孫、すなわち祖父母の形質が遺伝することを「劣性遺伝」とされています。悔しいですが私の1/4の遺伝子は劣性ということであります。とにもかくにも、私の初孫が健康に生まれて来たことは家族一同、感謝をしている所であります。それにしても、孫娘の遺伝的形質の品定めの会話が出来るのも贅沢な話であります。

 障害児をもつ親達の苦悩を題材としたドキュメント番組が放映されるのを観て、常に思うことは不屈の精神力と深き愛情を持って我が子を見捨てずに共に生きている肉親の姿に目頭を熱くするのは私ばかりではないと思います。
 この家族を見捨てない結び付きは子供を自分の分身であるとか、血の繋がりであるとか、遺伝子的(情)の絆がそうさせているのではないかと思うのであります。
 今、この家族の絆が崩壊し、親による子供の虐待は報道されています。家族の絆を忘れた親達に伝えたいことは自分の分身である我が子を傷つけることは自分を傷つけ、人間の尊厳を否定していることであることをわかってもらいたいものです。

 通夜の説法で「生まれて来るのも一人、死ぬ時も一人」と聞かされ「なるほどな」と今まで納得していましたが、孫が生まれて、それは違うのではないかと思うようになりました。確かに私の孫娘は一人で生まれましたが、生まれて来たその姿は、まさに私達、「家族」そのものでありました。即ち、私の孫娘は一人ではなく私達、家族と共に生まれて来たのであります。
 「輪廻転生」の仏教の教えがあります。人は死んでも生まれ変わるものと理解をしていた所です。これまた、私の形質を受け継いだ孫娘を見ていると死なずとも人は生まれ変われるのではないかと思わずにはいられません。

 私は去る2月22日に還暦を迎えた所であります。そのせいか通夜の席で聞かされる説法が、ことさら身近に思えてならないのです。残されし、生涯を真実に生きる「真生子」に自分の知り得る全ての知識を伝えることのできる喜びを実感している所であります。そして、未だ孫に恵まれない私の多くの友人に対し、少しばかりの優越感に浸りながら後輩のお爺ちゃん達に「孫って本当に可愛いものだ」とお伝えして終わらせて頂きます。


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