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  連載コラム 2008.夏 最新号

札幌電気工事業協同組合 理事長 尾池 一仁
経済大国ニッポンの功労者に付けられた総称は「後期高齢者」
 腹痛の時にも、風邪の時にも富山の常備薬を服用し、病院にも行かずに国の為、家族の為にと骨身を削って戦後の日本を世界第2位の経済大国にまで復興させる事を実現させ、人生の終焉を迎えた功労者に付けられた総称は「後期高齢者」。
 功労者の皆さんは、勤労を通じて得た報酬から、決して安くない年金掛金と健康保険料を長年に亘り国庫に納めて来たのであります。そして日本が豊かになると共に、豊かな年金生活と65歳以上よりは健康保険料を納めなくとも、病の時には手厚い看護を受けられる事を夢見て、国民としての義務を果たして来たのであります。

 国は国会決議をもって、いとも簡単に皆さんの権利を奪ったのであります。それも国民の権利を守るべき立場の官僚組織と国民主権を代弁すべき政治家が勝手に段階的な年金給付率の縮小を行い、勤労者の夢を奪ったことに飽き足らず、高齢者の増加に伴い医療費の負担が国の財政を圧迫するとの理由により、75歳以上の高齢者は従来の「健康保険制度」から脱退させ、新たな「後期高齢者医療制度」への加入を義務化し、支給年金から保険料を天引きするのであります。更には、扶養者である妻は主人の「後期高齢者医療制度」の適用は受けず、別に「国民健康保険制度」に加入させ保険料を別件で徴収する法律が、いとも簡単に可決された事には深い憤りを感じます。

 先の年金制度の支給率の抑制に関しては、労働人口の減少・少子化社会・日本経済の減退を目の当たりにして、納得せざるを得ない事ではあります。しかしながら、国政において年金制度の原資を税金にてまかなうなどとの議論がされた事には腹が立ちます。

 自らの将来の保障は、個々が掛けた掛金により受給資格が得られるものであり、掛金を納めていない者まで国が面倒を見るものではない事位の常識は、お偉い先生方にも持って頂きたいものです。

 一方、我が国の医療制度の根幹は「健康保険制度」であります。この制度は、国民の就業状況により区分されています。私達のような一般企業の就業者は、本人と会社が折半して保険料を納める「政府管掌健康保険」・大企業の職員組合で構成される「健康保険組合」・公務員を対象とする「公務員共済組合」・私立学校の教職員で構成される「私立学校教職員共済組合」・船員を対象の「船員保険」・そして自営業者あるいはフリーターなど就業組織を持ち得ない人々は、地方自治体に保険料を納めて資格を得る「国民健康保険」と、総ての国民は何らかの健康保険に加入しています。

 問題は、保険料の掛金が一律でないことであります。年間に50万円納める人、5万円納める人、千差万別であります。すなわち保険料の徴収(入口)には、格差があるのです。

 勤労精神の基で高度成長を支え続けて来た「政府管掌健康保険」対象者の「後期高齢者」の皆さんが、国庫に納めた生涯累積保険料は優に1千万円を超えています。にも関わらず、今まで納めた保険料を御破算にして、75歳からは新たに保険料を納めなければ、医療が受けられないのです。功労者の皆さん、もっと怒って下さい。

 この様に、納める保険料に格差はあるものの、受ける医療サービスは一律であります。そもそも保険制度は、掛金に相応するサービスを受けるべきものであります。何故に健康保険証は色分けされていないのでしょうか。多く納めた順に、「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」位の区分保険証にすべきであります。そのことが、自由主義国家の国民の権利であります。
 日本の政治は表向きは、権利の自由・住む場所の自由・職業選択の自由・主張の自由を定めながらも、裏口すなわち出口では権利を放棄した人にも、改めて権利を復活させすべてを平等に扱う、世界最強の社会主義国家の体制を呈しています。政治屋ならびに官僚組織は、この相反する主義を使い分け不正直な人々には天国である政策を横行させています。

 この事により、小・中学校は義務教育だから給食費も払わないなどと言うようなモンスターペアレントが増え続ける事態にもなりかねません。ならばいっそのこと、職業も報酬も国から頂き、すべてを国に管理される方がましなのではないか。そんな風に思ってしまうような日本であってはならないと、痛切に感じる今日この頃であります。

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